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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)355号 判決

一 請求の原因一ないし三(特許庁における手続の経緯、本願発明に係る特許請求の範囲の記載及び本件審決の理由の要点)が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

二 そこで、本件審決を取り消すべき事由の有無について判断する。

前記当事者間に争いのない特許請求の範囲の記載に、成立に争いのない甲第一一号証の二、三(第一図及び第二図)、甲第二三号証(昭和四二年四月二二日付全文訂正明細書)、甲第二四号証(第三図)、甲第二五号証の二(昭和四二年四月二四日付訂正書)を総合すると、本願明細書には、本件審決が指摘するとおり一般に使用されていないところの出願人独自の理解もしくは用法に基づく難解な用語もしくは表現形式が用いられており、かつ、それぞれの用語もしくは表現も統一的に使用されていないうえに、文章自体に難解で不明瞭な点が多いので、本願明細書の記載内容を正確に理解することは極めて困難であるといわざるを得ないが、この点はさておき、本願発明は、欠円形の内壁を有する二個の筒体を結合してなる案内溝を設けた外筒内に、同一方向に回転するらせん体を、両らせん翼が所定の間隙をもつように互いに「噛合わせて」配置し、入口側から出口側に向かつてらせん翼の外径は次第に大きくし、らせん翼のピツチは次第に小さくしていく構成を基本的構成とし、これによつて導入口から流入された流体をらせん翼で回転させ、遠心力を伴つた流体を相手らせん体のらせん翼の迎え角斜面の正面部に作用させてねじ押しの力を利用してねじポンプの作用を期待しようとするものであると認められる。しかしながら、本願発明の特許請求の範囲に規定された構成によつては、本願発明が目的として意図したような遠心力を伴つた流体の効率的な利用は到底期待できないものと認めざるをえない。すなわち、前掲各証拠によると、入口8から外筒円に導入した流体をらせん翼によつて回転させると、らせん翼間の流体が旋回し、遠心力が作用してらせん翼の上下面から流体が両らせん体のらせん翼が互いに入り込む部分に放出されるとしても、両らせん翼間には流体が充満しているおり、かつらせん翼が互いに入り込む部分においては、外筒円に放出された後の流体の旋回は互いに逆方向となるために、その逆方向の旋回流、遠心力で流出する流体及びらせん翼間の流体などが衝突して相互に激しく混ざり合い、流体の有する速度エネルギは直ちに圧力エネルギに変換され、流体の有する粘性によつて互いに逆向きの摩擦力が作用して、激しい渦となつてエネルギ損失を生じるものと考えられる。そうすると、衝突によつて圧力の上昇した流体は低圧部分に漏洩してしまうこととなり、比較的低圧な相手らせん翼の背面に回り込むようになり、出口側(高圧側)から入口側(低圧側)への圧力差によつて大きな内部漏洩が生じることが容易に予測される。したがつて、本願明細書の特許請求の範囲に規定されたごとき本願発明には、構成上、エネルギの損失とともに流体自体の大きな内部漏洩という基本的な欠陥が存することは明らかである(原告主張のようにエネルギー損失や内部漏洩が許容範囲に止どまるものとは考えられない。)。

このような基本的な欠陥が存するが故に、本願発明においては、原告の主張するような抵抗帯仕切(両らせん翼間隙のため本願発明では、いわゆる移動密封部の連続的形成は期待できない。)が連続的に形成されるとは到底認められないし、ましてや、らせん翼の上下面から放出される遠心力を伴つた流体の運動量をポンプ作用等に有効に働かせることは到底できないものと認めざるを得ない。結局、流体の効率的利用が実現できないばかりか、ねじふいご圧縮機・ねじポンプとしての基本的な機能をも奏し得ないものであるといわざるを得ない。原告は、本願発明がねじふいご圧縮機・ねじポンプとして有効に機能するものであるとして主張するが、原告の主張を勘案しても、右の基本的な欠陥についての認定判断を否定することはできない。そして、本願発明が、特許請求の範囲に記載された構成によつて、これらの欠陥を解消ないし解決し、有効な作用効果を奏する装置として実施できるものを実現したことを認め得る証拠は全く見いだせない。したがつて、本願発明は旧特許法第一条の規定する発明と認めることができないとした本件審決の判断は正当であつて、何ら違法の点はない。

三 以上のとおりであるから、その主張の点に認定判断を誤つた違法があることを理由に、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。

よつて、これを棄却することとする。

〔編注〕本願発明に係る特許請求の範囲の記載は左のとおりである。

本文記載の目的において本文に詳記し且図面に一例を示す如く、同方向に回転する両らせん体を、らせん翼が所定の間隙を有するように噛合わせ、これらを、らせん翼の外周円とらせん溝を形成するらせん胴との間に引いた共通内接線で形成される形状を境界部に設けた欠円形の内壁を有する二個の筒体を結合して中央部に案内溝を構成するようにした外筒内に軸支し、らせん翼の外径およびピツチは、それぞれ流体の入口側より出口側に向つて、次第に大および小にした凹円すい位相差ねじふいご圧縮機・ねじポンプ。

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